2011年12月4日日曜日

偉ぶるは馬鹿の始まり

「偉ぶるは馬鹿の始まり。偉ぶっても偉くはなれず、馬鹿にされても馬鹿にはならない」 昔ある人から教わって、ずっと印象に残っている言葉です。 ほかの人から一目置かれたいがゆえに偉そうな態度をとる人や、また他人を否定することで自分を浮き上がらせて見せようとする人を、良く見かけます。また、偉そうな態度をとることで他人を自分の思い通りに動かそうとする人も少なくありません。本当はその人の状況判断や段取りの甘さが原因で物事が円滑に進んでいないのに、それに気づこうとはせず、とどこおっている原因を他者に求め、部下などに過剰な負荷をかけてくる人は実は意外と多いです。 自営業を8年半続けてきた中で、時には自分で自分をほめたくなる瞬間がありました。しかし、らせん階段を一周するように経験を積んでは目線が少し高くなるとその分視野も広がって、自分が他人からほめてもらうことなど100年早い、ことに気付かされます。ですから、自分のスタイルを頑なに崩さず自分の過去の成功体験だけにしがみついている人は、とても滑稽に見えます。 もし偉そうな態度をとっている僕を見た時には、是非タイトルの言葉を言ってやってください。

2011年11月6日日曜日

読書推進

「読書推進運動」と聞くと「読書週間」が思い出されますが、これはすでに読書の楽しみを知っている人への働きかけが強く、読書の習慣のない人へのアピールにはなっていないように感じます。昔は、本は作りさえすれば消費者が見つけてくれ購入してくれた時代もあったのかもしれませんが、今は違います。テレビ番組から高性能テレビゲームや人気のテーマパークまで娯楽には困らず、生まれたときから家にはパソコンがあり、小学生の時から携帯電話を持たされ、また家庭の中に本棚のない家もある、そのような環境で育つ子どもたちに対して、もっと具体的な推進運動をしていかない限り、未来の消費者など育つわけもありません。ブックトークや読み聞かせの出来る人を気軽に学校や児童館などが呼べる仕組み作り、興味のわいた事柄を気軽に相談出来て的確なアドバイスをくれる図書館司書の育成などを、業界全体が協力し合って推進することの方が重要に思います。
書店でくじを配ったり、すでに本が好きな子どもたちだけが集まるようなイベントをしていては本当の推進運動にはならないように思えてなりません。

2011年10月8日土曜日

読書の効能

今でこそ児童書出版社は皆「読書は楽しみです」と言っていますが、僕が小さい頃の児童書には、いかにこの本が教育上好ましいものかを説いた「保護者の方へ」と題した文章が載っているものが少なからずありました。そのせいもあってか、いまだに子どもが「この本買って」と言ってきた時、判断基準が文章が多いか少ないかだったりする保護者は多いようです。また現在ではOECDの調査で日本の子どもたちの読解力が落ちていると報告されてから急に、読書の重要性が話題にされたりしています。読書の効能をセールストークにしたくはないですが、あえて挙げるとすれば僕は「想像力」ではないかと思っています。自然と戯れる機会が少なく、昔話を語ってくれる人が身近にいない現代の子どもにとって、絵本は想像力を養う身近な存在であるように思います。悲惨な事件を起こしてしまった若者も、もし小さいころから読書に親しんでいれば悲劇的な結末が予想できて、実行を思いとどまれたかもしれません。
数学者や科学者が研究する時に立てる仮説、実はこれこそ研究者の持つ想像力が重要です。
想像力が創造力になり行動力となる。絵本はその入り口だ、と言っては言いすぎでしょうか?

2011年10月5日水曜日

電子書籍は書籍じゃない

ipadの発売を聞いて飛びつくように買ってからすでに1年以上経ちました。電子書籍と呼ばれる書籍関連のアプリケーションをを色々ダウンロードしてみましたが、僕はなんだか違和感をうっすらと感じ続けていました。そして僕は最近やっとその違和感の根っこに気が付きました。
電子書籍というネーミングがいけないのです。
モニター上の擬似書籍でページをめくる感触が再現されていたり、紙をめくる音が再現されていたりしても、それは所詮デジタルの中でのことにすぎません。レコードはレコード、カセットテープはカセットテープ、CDだろうがMDだろうが我々はそのコンテンツを載せている媒体の名で素直に表現し分けてきました。なのに、なぜテキストが中心のデジタルコンテンツだけは、わざわざ書籍という表現に固執しているのでしょうか?書籍愛好家を少しでも取り込みたいという製作者側の気持ちだけが先走っているように思えます。僕はipadのような端末の中にあるアプリケーションを書籍と呼ぶことに抵抗を感じていたようなのです。
コンテンツが魅力的なら、書籍という表現にこだわらずともお客様はついてくるはずです。

2011年8月7日日曜日

絵本は音読するもの

僕が読み聞かせにセレクトする絵本は、どうやら他の人とは少し違うようなのですが、それは基本的に自分が気に入った絵本しか読んでこなかった結果にすぎません。では「僕はどんな絵本を好ましく思うのだろう」と自問自答してみると、ストーリーや構成に独自性があることはもちろんなのですが、音読してみて心地よいかどうかを重視している自分に気が付きました。読み聞かせなのですから音読が重要なのは当然ですが、これは読み聞かせに限らず全ての絵本にあてはまる重要ポイントのような気がしてきました。
海外の絵本には、韻を踏むために文章が長かったり説明過剰だったりするケースがありますが、それを日本語にする際に直訳してしまっても意味がありません。絵本の翻訳に必要なのは語学力ではなく日本語力です。そう思ってロングセラーと言われている翻訳絵本を見てみると、必ず日本語の持つリズムを良くわかっている方が訳しておられることに気が付きました。もしかすると逆に、今書店に並んでいる新刊の絵本で日本語のリズムを意識しているものが意外と少ない、ということはないでしょうか?
今後は、翻訳絵本に限らず音読を充分に意識した絵本が生き残っていく気がします。

2011年7月4日月曜日

 『子どもに本を買ってあげる前に読む本-現代子どもの本事情-』

赤木かん子さんは「子どもの本の探偵」として有名ですが、実は全国の学校の図書室の再生を手弁当でこつこつとなさっている方でもあります。赤木さんはそんな地道な活動を通して、現代の子ども達に好まれている本はどのような本なのか的確に把握されるようになりました。赤木さんのお話しを伺うと「子どもの活字離れ」など全くの作り事だということがわかります。
音楽の教科書に掲載される歌ががらりと入れ替えられていくのと同様に、子どもの本の世界にも流行りすたりがあるのです。昔自分が読んだ本だからという理由だけで子ども達に押し付けようとして失敗した方が「子どもの活字離れ」を語っているのではないでしょうか?最近、ロングセラーの絵本が売れなくなってきた、という話を聞きます。しかしそれを子どもの本離れのせいだと語る人がいたら要注意です。もうその本の神通力が通用しなくなったからだと僕は思っています。
赤木かん子さんによれば「1998年を境に子どもの読書傾向に世界的な断層が出来た」のだそうです。今の子ども達は新しい絵本や児童文学を待っているのです。訳知り顔で子どもの活字離れを嘆いている方には、是非この本を読んで現代を生きる子どもたちの読書事情を学ぶことをおすすめします。(赤木かん子/著 ポプラ社/刊)

2011年6月10日金曜日

今がチャンスだ!

先日ある絵本教室で、絵本作家を目指す方々を前にお話をする機会がありました。僕が絵本の読み聞かせにはまったきっかけ、読み聞かせで選んでしまう絵本とは、結局僕が好ましいと思う絵本とはどんな絵本なのか、プロデビューを目指すならどんなプロセスを経ることが結局近道になるのか、などと日頃思っていたことを心の赴くままに語ってしまいました。
生徒の皆さんからは「勉強になった」と言っていただきましたが、講師の先生にまで「ためになった」と言われてしまい恐縮しました。
最近ロングセラーの絵本が売れなくなってきた、という話を聞きます。でもそれを理由に「絵本の市場が縮小しているからだ」と言うのは早すぎると思います。これからは本当に面白い絵本しか残らないような気がします。逆に、新人絵本作家の絵本が受け入れられる可能性が拡がったとも言えるかもしれません。
絵本作家を目指している皆さんには、訳知り顔の先達の前で委縮することなく、ご自身の描きたいものを表現していただきたい。そう、今がチャンスなのです。

光村教育図書 翻訳絵本100点フェア

光村教育図書が翻訳絵本の出版に本格的に取り組み始めたのが約10年前。この春に刊行100点を超えたことを記念し、6月6日(月)から7月3日(日)まで紀伊国屋書店新宿南店で全点フェアを行ないます。6月12日(日)と19日(日)には僕が午後2時から読み聞かせ会をしますし、フェアの期間中、お店の外には大きな広告が貼られる予定です。また、立川のオリオン書房ノルテ店では現在「光村教育図書絵本100冊刊行記念フェア」と題し43点を面出ししてくださっています。こちらは6月上旬まで。是非お立ち寄りくださいますようお願い申し上げます。

サトシンさんにお会いしました。

第五回書店員が選ぶ絵本大賞を受賞した『うんこ!』の文を担当されたサトシンさんが、都内で読み聞かせ会をされると聞き、某書店に伺いました。
サトシンさんにご挨拶すると、僕が記念品を文溪堂の担当編集者にお渡ししたことをご存知で、すでに僕のホームページもご覧になっていたと聞き恐縮してしまいました。
同じ男の読み聞かせ仲間としていつか一緒に読み聞かせしたいですね、とお話ししました。(早川)

2011年4月10日日曜日

第五回書店員が選ぶ絵本大賞は 『うんこ!』 に決定!!

1位は『うんこ!』(文溪堂/刊 サトシン/文 西村敏雄/絵)4名の書店員から12ポイント獲得し, 第1位に決定いたしました。
個人的には物申したい部分もあるのですが、厳正なる投票の結果ですので気持ちよく祝福したいと思います。
くっそ~!!

2位は『おすわりくまちゃん』(岩崎書店/刊 シャーリー・パレントー/文デイヴィッド・ウォーカー/絵福永友美子/訳)7名の書店員から11ポイント獲得いたしました。

3位は『おおきな木』(あすなろ書房/刊 シェル・シルヴァスタイン/作村上春樹/訳)4名の書店員から9ポイント獲得いたしました。
4位は『『もりのおくのおちゃかいへ』(偕成社/刊 みやこしあきこ/作)4名の書店員から8ポイント獲得いたしました。
北は青森から南は鹿児島まで、児童書に熱心な書店の書店員様30名から、ご投票をいただきました。
ご協力ありがとうございました。

2011年3月7日月曜日

伝説の今泉棚

今から30年ほど前に、池袋リブロの人文書売場には「今泉棚」とあだ名される棚がありました。
先日、その伝説の棚を作った今泉正光さんのお話を聞いてきました。今泉さんは大変な読書家で、難解な本も読み解く読解力を持ち、著者や教授にも物怖じせずに会いに行っては議論をするような方だったそうです。その気になれば教授にもなれる方だと思うのに、今泉さんは書店員になります。150坪のキディランド大宮店では寒空の中駅前で婦人誌を売ったり、前橋西友時代には地元の読書会に顔を出すことで売上を伸ばしたりと、実践的な行動力のある方でした。当時「西武ブックセンター」という名称だった池袋リブロに移り、その博識と人脈を活かしどんな読書家をもうならせるような人文書の棚を作り、売上も飛躍的に伸ばしたそうです。
その後リブロを去り、前橋かんこ堂を経て現在は長野平安堂の古書売場にいるそうです。
お話を聞いていて一番感じたのは、今泉さんのような書店員に年棒1000万円以上払えるような仕組みを作れなかった点に、書店業界の大きな問題があったのではないか、という事です。

2011年2月8日火曜日

あなたのためだから

外為取引会社のCMに「あなたのためだから」と言って部下に残業を押し付ける上司や、勝手にケーキを横取りする友人が出てくるのがある。それを見ると僕が子どもの頃、母親がよく「あなたのために言っているのよ」と言いながら僕に色々な負荷をかけてきたことを思い出す。僕はその母親の期待になかなか答えることが出来ず、小学生にして常に胃がしくしく、たびたび口内炎が出来、友人から白髪を見つけられるような子どもだった。当時は親とはそういうものかと思っていたが、今なら断言できる。「あなたのためだから」の99%はそう言っている本人のためなのだと。母親が僕に様々な負荷をかけてきたモチベーションの源は、たぶんに自分の希望する道を我が子が歩んでくれれば自分が安心できる、母親としての評価が高まる点にあるのだと思う。「あなたのためだから」はその人に理路整然と説明ができない負荷をかける時の常套句。本当にその人のためになると思うのだったら、きちんと説明できなければ伝わらないし、たとえ伝わったとしても最終判断は本人に委ねなければ。だって人の未来を保障することなど誰にも出来ないのだから。

2011年1月10日月曜日

ホップステップジャンプ

昨年は “チーム絵本おやじ”が結成され10ステージほど活動したり、和歌山県の山奥の本屋さんイハラハートショップで読み聞かせをさせていただいたり、アメリカ出版研究会でお話させていただいたり、品川区の子育て中のパパママ相手にお話させていただいたりと、本業以外の活動もかなり増えてきました。絵本の読み聞かせばかりでなく、絵本や絵本作家の話、出版業界の話、そして子育ての話など、いずれもかなりご好評をいただいております。
お蔭様でスタッフも充実してきましたので、今年はもっと大きく活動の場を広げたいと思っています。
本年も宜しくお願いいたします。