2010年2月7日日曜日

おとなこども

先日、昔話研究の第一人者、小澤俊夫さんのお話を聞く機会がありました。ドイツ文学が専攻でグリム童話を研究されてきた先生は、その後日本の昔話の分析研究を精力的に進めて来られれました。全国で昔ばなし大学を開講され、今では600人以上の後継者を育てて来たそうです。メルヒェンの本場ドイツでは200年も前に昔話を口承できる方はいなくなってしまったのだそうで、かろうじてまだ日本には語りの出来る方がいらっしゃることは、世界的に見ても貴重なことだそうです。また、昔話には残酷な場面がたくさんありますが、それはそのまま伝えることが重要なのだそうで、そこをきちんと通り抜けた子どもの方が落ち着いた成長がのぞめる、とのことです。そして強く印象に残ったのは「お話を聞いたり本を読んだ後の子どもに感想を聞いてはいけない」というお話でした。感想を聞かれることが日常になった子どもは「いつも大人が喜ぶような答を考えてしまうような“おとなこども”になってしまう」のだそうです。どうやら戦後の児童書出版界は、こぞって「おとなこども」を育ててきてしまったようです。