2010年12月1日水曜日

イハラ・ハートショップ

朝日新聞出版/刊『すごい本屋!』の舞台、和歌山県のイハラ・ハートショップに行ってきました。
以前、東京国際ブックフェアでお会いした店主の井原さんからお電話があり「講談社のおはなし隊が店まで来るので読み聞かせして欲しい」と依頼があったからです。
そのお店の場所は、和歌山市から特急で40分の御坊市から路線バスで約1時間、その終点からコミュニティバスで約20分揺られた山奥にあります。以前は美山村と呼ばれたその地域の住人は約100人で、イハラ・ハートショップはその地区唯一の小売店なのです。ですから18坪ほどの店内には雑誌・書籍のほか、文房具、雑貨、お菓子、パン、アイスクリームなど多岐にわたる商品が並び、言ってみれば昔のよろずやさんのようです。
絵本の読み聞かせも大盛況の中終えることが出来ました。お店の近くには日本一のやまびこのポイントがあり、一人ヤッホーし、井原さんの用意してくださった温泉宿に泊めていただきました。
イハラ・ハートショップを見ていると書店の存続は、店主の気合次第に思えてきます。

2010年11月7日日曜日

学校図書館

小学生が新しい本と出会う場所として書店の次に来るのは学校の図書室でしょう。しかしその小学校の図書室には1953年から2003年まで50年近く「当分の間、司書教諭を置かないことができる。」との暫定的な措置が取られていたため、大部分の学校において司書教諭が置かれずにいました。そのため図書室の管理は、クラスを持っている先生の片手間で行なわれ、図書の購入は出入りの書店にかなり依存するケースが多かったのです。生徒がどのような本を望んでいるのか、貸し出し頻度はどのくらいか、といった検討はほとんどなかったのだと思います。一方出版社にとって、毎年購入の予算が明確にあり、出版社が自社の都合でつけた価格の商品を、アドバイス通りに定価で購入してくれる、こんなおいしいお客様はいません。その結果、書店店頭の競争にさらされることのない学校図書館専用のセット商品が大量に学校に送り込まれていったのです。司書教諭のいなかった図書室は、ある時間以外は鍵がかけられ、一度も開かれること無く埃をかぶったままの本も少なくありませんでした。
子どもの活字離れを嘆く出版社は多いですが、その原因の一端は我々児童書出版業界側にあるように思えてなりません。

2010年10月8日金曜日

僕はなぜ読み聞かせにこだわるのか?

僕は2006年2月から絵本の読み聞かせを始め、今年の9月で通算128回を数えました。
僕は語りでも紙芝居でもなく絵本の読み聞かせにこだわっています。それは僕の読み聞かせで気に入った絵本に出会ったら、買って帰って欲しいと願っているからです。ですから基本的に僕は、現在品切れ再販未定の絵本や稀少な絵本は読みません。
「すべての子どもに読書の喜びを」と願うのであれば、すでに本の楽しさを知っている子ども達だけを相手にするのではなく、町に出て現代を生きている子ども達に語り掛けるべきです。そうでなければ、すべての子どもに読書の喜びを知ってもらうことなど未来永劫不可能です。
自分達が選んだ絵本に「よい絵本」という帯をかけて悦にいっている人たちがいます。作家や出版社が苦労して作った絵本を良いだの悪いだのレッテルを貼るとは失礼だとは思わないのでしょうか?このような瑣末な活動がかえって読書推進の妨げになっているように思います。
今の子どものまわりには娯楽があふれています。本なんか読まなくても困りません。本当に子ども達を本に振り向かせたいのであれば、よほど新しい工夫をする必要があると僕は思います。

2010年9月7日火曜日

“チーム絵本おやじ”その後

三省堂書店の本部エリアマネージャーの吉田さんの肝いりで結成された「チーム絵本おやじ」は、5月と7月の成城学園前駅駅ビル中庭に続き、小田急デパート新宿店の催事場で8月13日(金)14日(土)15日(日)で各2回計6ステージを経験させていただきました。
13日は、50名くらいのお客様が来て下さりMXテレビの取材もあったりで盛り上がったのですが、14日の1回目はお客様の反応が薄く、終わってから我々3人はみっちり反省会をしました。
結果的に6ステージ中5ステージはまあまあの出来で一安心。おかげでJRAC代表幹事の小泉さんと、すずき出版の波賀編集長とのチームワークもバッチリになりました。
8月28日(土)には大宮そごう8階エレベータ前にて2時と4時の2ステージがありました。主催の方からは「今までの読み聞かせイベントで一番お客様が集まった」と言っていただきました。
10月23日(土)には、また成城学園前駅駅ビル中庭で2時からのステージが決まっています。
それから「チーム絵本おやじ」を呼んでみたいという方、交通費のみで伺いますのでお気軽にお問合せください。

2010年8月9日月曜日

 ipadその後

5月28日にipadを手に入れてすでに2カ月。「その頃にはさぞや楽しいデジタルライフを送っているに違いない」と思っていました。しかし現実には、僕のipadはほとんど埃をかぶったままです。基本的にipadは外に持ち出してこそその威力を発揮するわけですが、鞄に入れて持ち歩くには正直重い。すでに重い鞄にプラス730gの物を入れるのはかなり覚悟が要ります。それから電車の中ではかなり目立つ。これは自意識過剰なのかもしれませんが、時々話し声から見られていることを察知することがあります。そして自分としてはこれが一番致命的だったのですが、ワード&エクセルが使えないことです。自分の仕事のファイルがほとんどワード&エクセルで出来ていることに改めて気づかされました。基本が車移動で、出掛けた先で使うことをイメージして作られているipadは、日本では今のままでは爆発的な普及は見込めないと思います。重さが500gを切ること、ワード&エクセルがサクサク使えること、日本ではこれをクリアしない限り紙の本の優位性は保たれていると思います。
どなたか、ipadのヘビーユーザーの方おられましたらご指導ください。

2010年7月7日水曜日

『チーム絵本おやじ』

下北沢の三省堂書店で毎月読み聞かせをさせていただくようになって、もう4年半が経ちました。すると先日、三省堂書店エリアマネージャーの吉田さんより、三省堂書店成城店での1時間の読み聞かせイベントを打診されたのです。さすがに1時間の長丁場は荷が重いので、読書の会の小泉さんと相談をし、すずき出版の波賀編集長と3人で「チーム絵本おやじ」を結成しました。5月22日に小田急線成城学園前駅ビルの中庭で行った「絵本と紙芝居のイベント」は大好評をいただき、次回7月25日(日)午後2時まで決定してしまいました。またこれに気をよくされた吉田さんより、三省堂新宿店の入っている小田急デパートでの催事場でのイベントのお話までいただいたのです。8月13日(金)14日(土)15日(日)のそれぞれ午後2時からと午後5時からです。くしくもJRAC代表幹事の小泉さんと、副代表幹事の波賀さんと、事務局長の早川の3人による読み聞かせユニット『チーム絵本おやじ』、ご都合のつく方は是非ひやかしにおいで下さい。                                                

2010年6月10日木曜日

手に入れましたiPad!

5月28日、iPadを入手しました。重さ730gはけして軽くはありませんし、本体はつるつるしているので落としそうで怖いです。パソコンにつないでダウンロードするのが基本なので、あまりパソコンに慣れてない人は設定まで苦労します。実は僕もまだ全ての機能を把握できていませんから。「本を読むためのツール」と言うよりは「色々な機能を持ったモバイルツールで本も読める」と言った方が正解でしょう。
ですが、画面の美しさ、操作性、起動の速さ、バッテリーの持ち、など感心してしまいます。今後バージョンがアップするにつれてどんどん洗練されていくことは間違いないと思います。また当然他社も追随していくことでしょう。ビジネスマンを中心に徐々にユーザーが増え、気がついたら社会人のほとんどがサブ機としてモバイルツールを持ち歩くようになる日もそう遠くないと思われます。その時、今まで持ち歩いていた雑誌、単行本、文庫、新書も一緒に持ち歩く人がどれくらいいるでしょうか?
出版社も取次も書店も、この状況を見誤ると大変なことになるような気がします。                                                  

2010年5月12日水曜日

iPad

5月28日発売予定のiPadを予約しました。「今後、出版業界の方々とお話しする際に必要だと思ったから」というのは建前で、本当に欲しくなってしまったのです。と言うのもapple社製品フリークの僕の友人が、早々にアメリカからiPadを取り寄せたのを触らせてもらったからです。
重さは730gでB5判ハードカバーの本を1冊持っているぐらいの印象。操作は基本的に指で画面を触ってするので使いやすさはかなり突出しており、まるでパソコンの画面だけを持ち歩いているような感覚です。電車の中や喫茶店で普通にユーザーを見かける日は、そう遠くないでしょう。文庫や新書やビジネスマン向け雑誌もいずれiPodの中に入ってしまうと考えた方が良さそうです。
以前「紙の本が生きるか死ぬかは出版社次第だ」と言ったのと矛盾しているようですが、そうではありません。これからは極端に2分されていくと思うのです。パピルスの時代から人間と親和性が高く、バッテリー不用で落としても大丈夫、操作性にも優れた「本」の長所や魅力をより活かした商品が求められます。すでに教科書のデジタル化が話題になっている昨今、いずれ児童読物だってデジタルツールで読むようになると覚悟する必要があります。
絵本だけは紙であり続けて欲しいと個人的には思っていますが・・・。
書店がCDショップと同じ徹を踏まないよう、iPadを研究する必要があると思うのです。

2010年4月20日火曜日

しあわせのおじちゃん

僕がある書店で毎月読み聞かせをする時は、『しあわせならてをたたこう』(大日本絵画)を毎回最初に読んでいる。歌をうたいながらしかけを動かすので、導入にぴったりなのだ。先月もこの本を皮切りに読み聞かせをしたところ、終了後2歳ぐらいの男の子が何か僕に話しかけてきた。聞くと「しあわせのおじちゃん」といっているではないか!お母さん曰く、彼は読み聞かせをする僕のことを「しあわせのおじちゃん」と呼んでいるのだそうだ。もう涙が出そうなくらい嬉しかった。

前回「しあわせのおじちゃん」と呼んでくれたその男の子が、今回は僕が『しあわせなら手をたたこう』を読み終えた頃に到着。とっても寂しそうな顔をしていたので、終わってから彼のためにもう一度読んだ。
彼の満面の笑み。

2010年4月7日水曜日

行って来ました偕成社

第四回『書店員が選ぶ絵本大賞』の記念品をお渡しするため、4月1日に偕成社に行って参りました。今村社長が同席してくださる中『ちか100かいだてのいえ』をご担当された秋重羊さんに、ちっちゃなトロフィーをお渡ししました。岩井敏雄さんは,メディアアーティストとして第一線で活躍されておられる方なのですが、絵本作家としても有名になられ、よりいっそうお忙しくなってしまわれたそうです。第五回『書店員が選ぶ絵本大賞』もこの調子で行いますのでご協力よろしくお願いします。

2010年3月11日木曜日

発表!! 第四回書店員が選ぶ絵本大賞

第四回書店員が選ぶ絵本大賞は 『ちか100かいだてのいえ』 に決定!!
『ちか100かいだてのいえ』 偕成社/刊 岩井俊夫/作が、5名の書店員から11ポイント 獲得し、
第四回『書店員が選ぶ絵本大賞』の 第1位に決定いたしました。
『ないしょのおともだち』 ほるぷ出版/刊 ビバリー・ドノフリオ/文  B・マクリントック/絵 福本友美子/訳 が4名9ポイント獲得し2位に
『またまたぶたのたね』 絵本館/刊 佐々木マキ/作が3名8ポイントを 獲得し3位でした。
第三回の時にも『100かいだてのいえ』が2位になっていますので、これは文句なし堂々の1位と言って良いと思います。北は青森から南は鹿児島まで、児童書に熱心な書店の書店員様29名から、ご投票をいただきました。ご協力ありがとうございました。来年もよろしくお願い申し上げます。

2010年2月7日日曜日

おとなこども

先日、昔話研究の第一人者、小澤俊夫さんのお話を聞く機会がありました。ドイツ文学が専攻でグリム童話を研究されてきた先生は、その後日本の昔話の分析研究を精力的に進めて来られれました。全国で昔ばなし大学を開講され、今では600人以上の後継者を育てて来たそうです。メルヒェンの本場ドイツでは200年も前に昔話を口承できる方はいなくなってしまったのだそうで、かろうじてまだ日本には語りの出来る方がいらっしゃることは、世界的に見ても貴重なことだそうです。また、昔話には残酷な場面がたくさんありますが、それはそのまま伝えることが重要なのだそうで、そこをきちんと通り抜けた子どもの方が落ち着いた成長がのぞめる、とのことです。そして強く印象に残ったのは「お話を聞いたり本を読んだ後の子どもに感想を聞いてはいけない」というお話でした。感想を聞かれることが日常になった子どもは「いつも大人が喜ぶような答を考えてしまうような“おとなこども”になってしまう」のだそうです。どうやら戦後の児童書出版界は、こぞって「おとなこども」を育ててきてしまったようです。

2010年1月1日金曜日

あけましておめでとうございます。

あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。

先日、ある経営コンサルタントのセミナーに参加した時に、こんな話を聞きました。
「営業にとって大事なのは共感力だ。相手の話を聞いた時、どれだけ自分は相手の話に共感したか、を上手に伝えられるかどうかで結果は大きく変わってくる。しかし、今の若い営業マンには、その共感を相手にうまく伝える技術が欠けている」。そして参加者から「共感力を鍛えるために有効な方法は?」と聞かれた先生はすかさず「本を読むことです」とおっしゃたのです。本を読むことでボキャブラリーが増え、自分が感じたことを適切に相手に伝えることが出来るようになる、のだそうです。
やった!やっぱり本なのだ。
この先生は、これからの企業にとってネットの有効利用がますます重要になる、というポリシーでお話される方なのですが、その先生も迷わず読書の重要性を説いてくださいました。
読書推進を学校の成績にからめて語るのには大反対ですが、読書の習慣が有るか無いかは後で差が出る、とは言えそうです。