2011年11月6日日曜日

読書推進

「読書推進運動」と聞くと「読書週間」が思い出されますが、これはすでに読書の楽しみを知っている人への働きかけが強く、読書の習慣のない人へのアピールにはなっていないように感じます。昔は、本は作りさえすれば消費者が見つけてくれ購入してくれた時代もあったのかもしれませんが、今は違います。テレビ番組から高性能テレビゲームや人気のテーマパークまで娯楽には困らず、生まれたときから家にはパソコンがあり、小学生の時から携帯電話を持たされ、また家庭の中に本棚のない家もある、そのような環境で育つ子どもたちに対して、もっと具体的な推進運動をしていかない限り、未来の消費者など育つわけもありません。ブックトークや読み聞かせの出来る人を気軽に学校や児童館などが呼べる仕組み作り、興味のわいた事柄を気軽に相談出来て的確なアドバイスをくれる図書館司書の育成などを、業界全体が協力し合って推進することの方が重要に思います。
書店でくじを配ったり、すでに本が好きな子どもたちだけが集まるようなイベントをしていては本当の推進運動にはならないように思えてなりません。

2011年10月8日土曜日

読書の効能

今でこそ児童書出版社は皆「読書は楽しみです」と言っていますが、僕が小さい頃の児童書には、いかにこの本が教育上好ましいものかを説いた「保護者の方へ」と題した文章が載っているものが少なからずありました。そのせいもあってか、いまだに子どもが「この本買って」と言ってきた時、判断基準が文章が多いか少ないかだったりする保護者は多いようです。また現在ではOECDの調査で日本の子どもたちの読解力が落ちていると報告されてから急に、読書の重要性が話題にされたりしています。読書の効能をセールストークにしたくはないですが、あえて挙げるとすれば僕は「想像力」ではないかと思っています。自然と戯れる機会が少なく、昔話を語ってくれる人が身近にいない現代の子どもにとって、絵本は想像力を養う身近な存在であるように思います。悲惨な事件を起こしてしまった若者も、もし小さいころから読書に親しんでいれば悲劇的な結末が予想できて、実行を思いとどまれたかもしれません。
数学者や科学者が研究する時に立てる仮説、実はこれこそ研究者の持つ想像力が重要です。
想像力が創造力になり行動力となる。絵本はその入り口だ、と言っては言いすぎでしょうか?

2011年10月5日水曜日

電子書籍は書籍じゃない

ipadの発売を聞いて飛びつくように買ってからすでに1年以上経ちました。電子書籍と呼ばれる書籍関連のアプリケーションをを色々ダウンロードしてみましたが、僕はなんだか違和感をうっすらと感じ続けていました。そして僕は最近やっとその違和感の根っこに気が付きました。
電子書籍というネーミングがいけないのです。
モニター上の擬似書籍でページをめくる感触が再現されていたり、紙をめくる音が再現されていたりしても、それは所詮デジタルの中でのことにすぎません。レコードはレコード、カセットテープはカセットテープ、CDだろうがMDだろうが我々はそのコンテンツを載せている媒体の名で素直に表現し分けてきました。なのに、なぜテキストが中心のデジタルコンテンツだけは、わざわざ書籍という表現に固執しているのでしょうか?書籍愛好家を少しでも取り込みたいという製作者側の気持ちだけが先走っているように思えます。僕はipadのような端末の中にあるアプリケーションを書籍と呼ぶことに抵抗を感じていたようなのです。
コンテンツが魅力的なら、書籍という表現にこだわらずともお客様はついてくるはずです。

2011年8月7日日曜日

絵本は音読するもの

僕が読み聞かせにセレクトする絵本は、どうやら他の人とは少し違うようなのですが、それは基本的に自分が気に入った絵本しか読んでこなかった結果にすぎません。では「僕はどんな絵本を好ましく思うのだろう」と自問自答してみると、ストーリーや構成に独自性があることはもちろんなのですが、音読してみて心地よいかどうかを重視している自分に気が付きました。読み聞かせなのですから音読が重要なのは当然ですが、これは読み聞かせに限らず全ての絵本にあてはまる重要ポイントのような気がしてきました。
海外の絵本には、韻を踏むために文章が長かったり説明過剰だったりするケースがありますが、それを日本語にする際に直訳してしまっても意味がありません。絵本の翻訳に必要なのは語学力ではなく日本語力です。そう思ってロングセラーと言われている翻訳絵本を見てみると、必ず日本語の持つリズムを良くわかっている方が訳しておられることに気が付きました。もしかすると逆に、今書店に並んでいる新刊の絵本で日本語のリズムを意識しているものが意外と少ない、ということはないでしょうか?
今後は、翻訳絵本に限らず音読を充分に意識した絵本が生き残っていく気がします。

2011年7月4日月曜日

 『子どもに本を買ってあげる前に読む本-現代子どもの本事情-』

赤木かん子さんは「子どもの本の探偵」として有名ですが、実は全国の学校の図書室の再生を手弁当でこつこつとなさっている方でもあります。赤木さんはそんな地道な活動を通して、現代の子ども達に好まれている本はどのような本なのか的確に把握されるようになりました。赤木さんのお話しを伺うと「子どもの活字離れ」など全くの作り事だということがわかります。
音楽の教科書に掲載される歌ががらりと入れ替えられていくのと同様に、子どもの本の世界にも流行りすたりがあるのです。昔自分が読んだ本だからという理由だけで子ども達に押し付けようとして失敗した方が「子どもの活字離れ」を語っているのではないでしょうか?最近、ロングセラーの絵本が売れなくなってきた、という話を聞きます。しかしそれを子どもの本離れのせいだと語る人がいたら要注意です。もうその本の神通力が通用しなくなったからだと僕は思っています。
赤木かん子さんによれば「1998年を境に子どもの読書傾向に世界的な断層が出来た」のだそうです。今の子ども達は新しい絵本や児童文学を待っているのです。訳知り顔で子どもの活字離れを嘆いている方には、是非この本を読んで現代を生きる子どもたちの読書事情を学ぶことをおすすめします。(赤木かん子/著 ポプラ社/刊)